ティーダの初夏

ぼくはティーダ

太陽っていう意味の名前なんだって

ぼくに乗ってるのは背の高い意外にスタイルのいいおばあさん

でも桜を見に行ってぼくが転んでおばあさんが怪我して

こないだやっと迎えに来てくれて仲間のいるバイク置き場に戻ってこれたんだけど

おばあさんたらまた来なくなっちゃった

また走りに行くからねって言ってたのに

お天気も良かったし風も気持ち良さそうだった日もおばあさんは来なくて

一番大好きだって言ってた5月が終わっちゃったじゃないか

仲間たちもあんまりいっぱい走りに行く感じじゃないから

みんなであくびしながらおしゃべりしたり今まで行ったところの想い出とか話したりして少しは楽しいけど

またあの女の子みたいにおばあさんもぼくに飽きて中古バイク屋さんに売ってしまうのかななんてちょっぴり考えて悲しくなる夜もあった

もう梅雨だねって隣の隣のエストレヤのいとこが言って

みんなそうだね今よりずっと走りに行けなくなっちゃうねって言うから

ぼくはつまんない

今日は曇りでお昼から雨が降るよってスズメさんが言ってたから

ぼくはのんびり寝てたんだけど

聞こえたんだ

あの足音!

小さい小さい声でよいしょよいしょって言ってる声!

あ、もしかして・・・



きたーーーきたーーーきたーーー!!!

おばあさんがきたーーー!!!

ぼくちびりそうになったけど整備のお兄さんがちゃんと点検してくれたばかりだからどこにもちびらないよ

隣のシートの中でびっくりして起きたバイクの仲間が言った

ティーダ、あんまり興奮しちゃいけないよ

かみさまに言われたんだろう?しっかりおばあさんを励ましてあげなさいって

君のおばあさんは久しぶりに走るから緊張してるだろうし不安になってるかもしれないから

君がちゃんとしないと

だから静かに落ち着いて、おばあさんにおはようって言うんだよ

う、うん、わかった、ぼく落ち着くよ

ティーダおはよう

ずっと来れなくてごめんね

今日はちょびっとだけ走りに行くから、よろしくね

やったー!ぼく、また走りに行けるんだ

ぼく、頑張るよ

やたがらすさまといっしょに頑張るよ

おばあさんはぐるりとぼくを点検してゆっくり走り出した

ちょっとぎこちないけど、きっと大丈夫

最初に天神様に行くからね

お酒とタコとお菓子をてんじんさまという神さまにお供えするんだって

お願いを叶えてくれたお礼といつもの感謝をするんだって

おばあさんは心の中でぼくに教えてくれた

でもぼくもっと奥の心の声も聞こえちゃうから

本当はお供えもののおさがりを楽しみにしてるってことがわかっちゃったんだ

おさがりってねかみさまにあげたお酒とか食べ物を持ち帰って自分で飲んだり食べたりすることなんだって

おばあさんは相変わらずだなってぼくちょっとクスッとしたけど

おばあさんのそんなところがぼくは嫌いじゃないよ

それからそれからいつもぼくの上にちょこんととまってるやたがらすさまが

てんじんさまに着いた時からどこかに飛んで行っててんじんさまから道に出た時に戻ってきたんだ

いままで見たことないあわてようだったけどどうかしたのかな

おわり

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