ティーダの春2

ぼくはティーダ

おばあさんが迎えに来てくれたから、ぼくはいま他所のマンションの下にあるバイク置き場で寝てる

ぼくの他に仲間が3台いて、1台は隣の隣にいるいとこのエストレヤさんだから、なんだかとっても安心する

仲間たちと時々聞こえない声でおしゃべりしたり

みんな、ぼくに乗ってるおばあさんを褒めるんだ

いつも走って帰ってくるとタオルで綺麗に拭いてくれて、ここに並んでる中では一番いっぱい走りに行ってたからって

でもまたおばあさん来なくなっちゃった

また走りに行こうねって言ったのに

まだ足が痛いのかな、ばくのことちょっと飽きたのかな

3台のオートバイたちが言うんだ

今度はどこに行くんだろうねみんな

ティーダはどこに行きたいの?

ぼくねいろいろ気に入った道があるんだけど、近いとこの林の中の神さまのとこにまた行きたいんだ

細い山道を、歩いてるおじさんとか学生さんとかにお辞儀しながら、おばあさんはよろよろと走って行って

やっと着いたとこでぼくをとめて、待っててねって鳥居の中に入って行った

神さまはね、おばあさんが山の上のお堂まで一生懸命大きな岩の道を登ってる時に笑いながら見てて

おばあさんがなかなか上まで登って行けないから、待ちきれなくてぼくのとこまで降りてきて言ったんだ

おお、おまえは太陽という意味の名前なのかい、しかも八咫烏が付いてるね、こりゃ本物の太陽じゃワハハハ

神さまは楽しそうに笑ってて、時々おばあさんの様子を見ながらぼくに話しかけた

おまえは八咫烏って知っておるか?太陽の黒点とも言われておるのじゃよ

あのおばあさんは知らずにおまえにお守りのつもりでシールを貼ったのじゃろうが

太陽に八咫烏は素晴らしい縁起の良いことじゃぞ

おまえは小さいけれど立派に走りなさい、おばあさんと一緒に素晴らしい旅をたくさんして、出会う人みんなに幸せの光を分けてあげなさい

お婆さんはお金に欲が無くてあのように体力にも限界があるようだけど、くじけないようにおまえが励ましてあげなきゃだめだよ

そう言ってお堂に着いたおばあさんの方に急いで行っちゃった

だからぼく、またあの神さまのところに行きたくて

ティーダはおばあさんに大事にされてるし、神さまにも褒めてもらえて良かったね

駐車場仲間のオートバイたちは、そう言って、みんな大事にされてて良かったねいい旅しようねって言ってた

ここはバイク屋さんの倉庫じゃないから心配しないでおばあさんが来るまで待つよ、ぼく

おわり

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