彼らの旅 私の旅 ある雨の春の夜

キッチンでハイボールを作る。

氷を入れ、ウイスキーを氷に馴染ませるように注ぎ、軽くステア。

ソーダを氷に触れないように注ぎ込み、縦に一度だけステア。
これで完璧だ。

ウイスキーの公式サイトにある、写真入りの丁寧な作り方を再現してみた。

食事を終えた週末の夜。
ハイボールのグラスを持って、書斎に入る。
デスクに座り、パソコンの電源を入れる。

つまみはコンビニの、バカにできないミックスナッツを一袋。
ハニーローストナッツ。甘いやつ。これが、なかなかいけるのだ。

僕は甘党だ。酒も好きだ。
正解に言うなら、美味いものはみな好きだ。
言ってしまうと、食いしん坊ってことだ。

モニターには、いつものダッシュボード。
今夜もオートバイの話を2つ書き込んで寝るとしよう。

僕は、北に向かってグラスを軽く掲げ、乾杯、と言ってみる。
オートバイと酒と文章を愛する同士に向けて。

その人の事をいつしか僕は、心の中で同士と呼ぶようになった。
その人は、僕の事を勝手に編集镸と呼んでいる。

それは、昔の僕がなりたかった職業の1つだ。

少し前、この街をはるばる訪ねてきてくれたお礼に渡した、故郷の自慢のウイスキー。

間髪おかず「重い」と言われ、僕はヘコんだが。
こっそり、自分にも1本買っておいた。

こんな高いウィスキーどうしたの?と言う妻には、こう言った。
酒の飲めない、取引先の社長のお下がりさ、と。

北の街の同志のデスクにも、淡い琥珀色の花が咲きほこっているに違いない。

サントリー 知多

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おわり

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