
「てわけで、自称、気化器少年は九州から四国へ渡るわけさ」(前の話は『彼らの旅 私の旅 ある夜の男の物語「気化器少年の旅」前半』参照)
「ふーん。みんないろいろあるんですね、若い頃って。でも、私もだけど、そんな時、バイクがあって本当に良かったなって思います」
「彼の話はまだ続くんだよ。四国へ渡ったはいいけど・・・」

「気化器少年の旅」後半
翌朝8時頃まで布団のなかでダラダラと過ごすが「エイャア!」と布団から飛び出て出発の準備。
外は、酷くはないがチラチラと雪が舞ってる。まあでも愛媛に渡れば温暖な日差しがあると信じて出発する。
30分くらい走ると手の先が痺れる。グローブは、自慢のカドヤ。
ライダースのレザーの上下に憧れたが、買えるのはグローブくらいが精一杯だった。
佐賀関港までの道のりは、海沿いの風が極寒で凍結も怖くてスピードが出せない。ゆっくりと車の通りが多い道路を選んで進む。
佐賀関港でフェリーの乗務員が
「バイクかぁー!」
「向こう(愛媛側)は、雪よー」
マジか。
船内は、暖房が効いていて暖かいが、あっという間に四国に着船だ。
じゃこ天とか食べたいが、寒すぎてとりあえずフェリー乗り場の横のバス停の小屋で寒さを凌ぐ。
「なんでこんなことしてるんだろ?」
雪が酷くなった。
とりあえず佐田岬半島の道路を八幡浜市内に向けて走り出すが、道路にも雪が積もってきた。
時速20km以上は、出せない。
寒さも限界だ。
服に積もる雪を時々、止まって振り落としながら岬の下を眺めると、民家も何もない海沿いにぽつんと漁師の網小屋が見える。
とりあえず、下に降りて網小屋に避難する。
1人で旅をしているといろいろと考えることが多い。
どうすればこの状況を乗り切れるか、考えるのが楽しい。
仕事でいろいろ考えるのは、ただストレスでしかないが、旅ならそのリカバリーが楽しい。
旅の醍醐味は、苦行をどう回避、リカバリーするのを考えることなのかもしれない。
それには、協力してくれる人もいるし。
まったく知らない他人の心情に触れらる。
そんな事を考えながら網小屋から出発する。時刻はもう昼だ。今日、香川県の坂出までは、無理だろう。
とりあえず松山で一泊することにする。松山駅前のビジネスホテルに泊まる。
松山って道後温泉の華やかなイメージがあるが、松山駅周辺は閑散としていて夕食をとる食堂もまばらだ。
駅のキヨスクで弁当と酒を買い、部屋で食べる。
明日は、家に帰ろう。
両親と祖父母の居る我が家に帰ろう。
農作業を手伝い、少し親孝行してみるのも悪くない。
おわり
文章と写真は、やまびーさん作。
「やまびー」はXのアカウント名です。
ご投稿、ありがとうございました<(_ _)>
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